女性ならではの気づきを生かし、コミュニケーションで顧客を開拓。株式会社安全会議代表 森川美希氏の起業ストーリー
福岡県で起業する女性をサポートする「Bloom福岡」では、県内で活躍する女性起業家を交えたネットワークを作り、定期的な交流の場を設けています。今回はこの事業に賛同いただいている県内の女性起業家である、株式会社安全会議代表の森川美希氏に、起業のきっかけや事業を広げるうえでの課題、大切にされていることなどについてお話を伺いました。
〜プロフィール〜
運輸事業者向けにコミュニケーションエラーを防ぐ安全・人材研修や、各従業員が立場に関係なく自由に発言できる心理的安全性を活用した職場づくりのコンサルティング業を実施。
起業はひょんなきっかけから。現場の気付きが事業の基盤に
最初に貴社の事業内容について教えて下さい。
森川氏:
弊社は「安全な現場づくり、人づくり」を基軸に、運輸事業者様を始め建設や医療、製造業など、多様な業界の事業者様の安全な組織作りをお手伝いさせていただいております。
起業を決意されるまでにはどのような経緯があったのでしょうか?
起業前にも同様の事業を展開する会社に勤めており、最後の3年間は岡山で単身赴任でした。このまま定年を迎えるんだろうなとぼんやり考えていた一方で、帰省するたびに福岡の老舗喫茶店を切り盛りする母を見て「定年がない仕事っていいな」なんて思っていたんです。
その頃、私自身も50歳が見えてきた頃だったので「このまま会社員として定年まで働いて…その先自分はどうするんだろう」と考える時間が増えていました。ちょうど子どもたちも独立した時期だったので、もはや会社員でいる必要もないのでは、なんて思い始めて。
そんなときに、当時の取引先の方や関係者に「起業ってどう思います?」とお話したら、「森川さんなら起業できるよ!」「パワーがあるし」なんて励まされて、そんなもんかなと思って起業した、というのが本音なんです。
そうだったんですね。
では、なぜ安全な組織作り、人づくりという分野での
起業を決意されたのでしょうか?
ここは安全分野に対する私の「気付き」が関わっています。当時関わっていたのが、運転適性検査を通じて、ドライバーの事故を予防するサービスを販売する仕事でした。この検査は、これから免許を取る人たちにはとてもいい教育です。ただ、すでにドライバーとして活躍されている方には、もっと踏み込んだ改善が必要だと気づき、より深く安全分野に携わりたいと思うようになりました。
例えばトラックドライバーの勤務状況です。当時は長時間労働が当たり前。1日16時間も運転する人がいて衝撃を受けました。さらに安全装置をつけていない車両も多かったんです。働く人たちが安心して業務に取り組めるような環境が整っていないことに疑問を抱きました。
現在は法整備も進み、改善の方向にはありますが、当時は安全ルールや法改正の情報が現場まで十分に伝わっていなかったんです。そんな状況をを知ってしまったら「なんで?」って思うじゃないですか。情報を広めていかねばと感じ、この分野に取り組んでいます。
大切なのは情報を相手にしっかり伝え、理解してもらうこと
現在、事業をされるうえで、特に大切にしていることは何でしょうか?
一番大切にしているのはコミュニケーションですね。私はコミュニケーションを「教育をし、指導をし、面談をし、声をかけ、気にかけ、見守り、その人に必要な情報を渡していく」ことと定義づけています。もちろん日常会話を通してその人と仲良くなることも大切です。でも本当に必要な情報がちゃんと伝わっていなければ、コミュニケーションが取れているとはいえないと思うんです。
例えば、「従業員が教えたとおりに仕事しない」ということってよくありますよね。そういう時には、教えた内容が、相手の中で本当に腑に落ちているか確認する必要があります。
根本は人と人との対話です。コミュニケーションエラーがヒューマンエラーを起こし、事故や労災、入力ミスにつながる。だからこそクライアントの皆さんには、教えたという事実ではなく、なぜ相手が思ったとおりに行動しないのか、その理由を深堀りしてほしいと伝えています。
少し話は異なりますが、私自身、会社員時代には転職を繰り返しながらも、各社でしっかりと教育していただきました。このときに必要な情報をきちんと伝えていただき、それを受け取れたからこそ、結果を出し、営業成績も残すことができたんです。だからこそ、必要な人に必要な情報を届けることが私の使命だと思っています。
ー 今のお話は他の業界にも通じるところがありますね。
そうなんです。ただ、私がこれまで関わった業界の中で一番大変で、義務として安全業務を怠ってはいけないというのが運輸の皆さんだなと感じているので、特化して仕事をさせていただいています。
顧客創出のきっかけはこれまでの人脈に
起業する際にぶつかった壁はありましたか?
起業するまでの壁っていうのはほとんどなかったですね。ただ、どうやって顧客を獲得していけばいいのかがわからなくて。今までと違って会社の後ろ盾がない無名の会社だったので、どう営業すればいいんだろうって。
ブランディング塾に通ったり、知り合いにコーチングやカウンセリングの仕事をもらったりしていましたが、「自分の目指している方向とは違う」と感じて、改めてどういった人たちとつながるべきかを考えたんです。ちょうどその頃、年末が近かったこともあり、次年度が始まる前に公的機関とのつながりがほしいなと考えるようになりました。ただ、前職の仕事を取るようなことはしたくなかったので、当時ほとんど開拓していなかった行政にアプローチしようと知り合いを頼ったところ、トントン拍子でつながってお仕事をいただくことができたんです。この成功体験は大きかったですね。
ここから、以前在籍していた会社の顧客にアプローチし、元の会社とつながっていない会社を紹介してもらうことで顧客を見つけることができました。こうして紹介でつながった企業様が今のクライアントの基盤になっていますし、今では全国からお声をかけていただいております。
女性ならではの起業の壁はありましたか?
実は、起業してから「女性だから」と壁を感じたことはないんです。ただ、周りからは「女性だから商売を広げるのが難しいんじゃないか」とか「事業が小さい枠に収まっている」と見られているなと感じることはあります。ただ、それもイメージの問題だけなので、壁というわけではなかったですね。
女性の感覚を大切に。お困りごとは言葉に出して
起業や創業を考えている女性に伝えたいことがあれば、ぜひお聞かせください。
安全の業界で感じたのは、女性だからこそ感じられる課題や感覚があるということです。だからこそ、女性の皆さんが今の活動や発信をどんどん行っていけば、男性が気付けなかった部分にリーチでき、結果として新しいサービスが生まれると感じています。
あと、「私、困っています。助けてください」と周囲に伝えることです。私も顧客が獲得できずに困っていたときに、周りに「知っている人を紹介してもらえませんか?」とお願いして新しいネットワークを広げていきました。周りのリソースを生かし、必要なときは周囲に協力を求めることも、ビジネスを続けるためには重要だと思います。
女性ならではの気付きとコミュニケーションを大切に、事業を広げてきた森川氏。森川氏はJWLI(Japan Women’s Leadership Initiative)ブートキャンプという、ボストンの財団が主催する女性リーダー育成プログラムを広げる活動も行っています。福岡でも開催が予定されているので、興味があればぜひチェックしてみてください。
Bloom福岡では、森川氏をはじめとした女性の先輩起業家との交流も図ることができるなど、本気で起業したい皆さんをサポートする仕組みを整えております。気になる方はぜひLINE公式アカウントを友だち追加し、参加してみてください。
■会社概要
会社名:株式会社安全会議
URL:https://anzen-kaigi.co.jp/
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅東1-12-17-3F
設立:2016年登記 2017年1月事業開始
代表:森川美希
■事業内容
・安全組織改革コンサルティング
・ミーティングファシリテーション
・1on1代行(管理者向けコーチング、管理者育成)
・安全講話・研修
■問い合わせ先
Mail:info@anzen-kaigi.co.jp
Tel : 092-531-1920