
突然の挫折が起業のきっかけに。株式会社三角形 福岡佐知子氏の起業ストーリー

福岡県で起業する女性をサポートする「Bloom福岡」では、県内で活躍する女性起業家を交えたネットワークや定期的な交流の場を設けています。今回は、NPO法人からスタートし、まちづくりや商店街活性事業などを手掛けている株式会社三角形の福岡佐知子氏に、起業のきっかけや男性社会におけるポジショニングの重要性、お金・人脈・実績の作り方などについてお話を伺いました。
〜プロフィール〜
北九州を拠点とするPR・企画会社「株式会社三角形」代表・福岡佐知子氏。
PRを「つながりづくり」と位置づけ、企業・行政向けのコンサルティングに加え、商店街活性化やまちづくりなど、多様な領域で事業を展開している。非営利事業から飲食店経営、不動産事業まで幅広いアプローチで地域課題の解決に取り組む。
脱サラ後、人脈・資金・実績ゼロからのスタートで、地域に根ざした事業を築き上げてきた。
見知らぬ土地で社長が夜逃げ。突然迫られた起業。
最初に事業内容について教えて下さい。
弊社は「誰もが参画できる社会づくり」を掲げ、福岡県・北九州市を拠点に活動しています。
企業や行政、地域の課題に寄り添い、PRやプロジェクトマネジメント、まちづくりブランディングといった主に3つのアプローチで、企画立案から実行までを一貫して手がけています。特に、まちづくりは私の起業の起点とも言える事業で、2020年には黒崎にある寿通り商店街の再生を目的とした株式会社寿百家店という別会社も立ち上げました。

ー まちづくりが起業のきっかけだったのですね。その経緯をお聞かせください。
以前、文化施設で働いていた経験から、街をフィールドに仕事がしたいと思うようになりました。ちょうどその頃、福岡県北九州市にある黒崎という地域でまちづくり会社を立ち上げた方から、就職しないかと誘われたんです。
当時まちづくり会社といえば、ほとんどが東京や関西を中心としたものだったので、県内で自分が希望している仕事に携われることがうれしくて、早速転職したんです。
ところが、自分を誘ってくれた社長が3ヶ月後に失踪してしまって。給料未払いや当時手掛けていた事業の完遂など、突如としてさまざまな困難に直面することとなります。なんとかこれらは乗り越えられたものの、地元でもない黒崎という地域で何もかも失くしてしまったんですね。
初めての体験でどうすればいいかわからない中で、一時は別の場所で働くことも考えました。でも、自分がやりたかったことを仕事にするためには、自分でなにかを始める以外に選択肢が思い浮かびませんでした。
そのためには、お金・人脈・実績の3つが必要でしたが、お金が潤沢にあるわけでもなく、地元ではないため人脈もなく、さらにまちづくりの実績もありませんでした。
そこで実績を作るために、2012年にNPO団体を作ってまちづくりに関わる仕事をしていくことを決意しました。
人が集う場づくりが、つながりや仕事、経験を育ててくれた。
波乱万丈のスタートだったのですね。
お金・人脈・実績の3つは起業でも大事な要素だと思います。
どのようにこれらを作っていかれたのですか。
お金に関しては、チラシ配りや営業など、できることは何でもしました。こうした中で、失踪した社長の関係の方から「駅前に空き家になったスナックがあるけど、事務所として使わないか」とお声をかけていただいたんです。
正直当初は、スナックを事務所にするなんてありえないと思っていましたが、周りからは独特の雰囲気がいいと褒められたんです。
それならと、この場所の雰囲気を生かして、まちをテーマにした異業種交流会を週に1回程度開催することにしました。回数を追うごとにたくさんの人が集まるようになり、ここで生まれたアイデアを形にするなどして、徐々に実績も重ねていきました。
ー お金・人脈・実績を作るうえで、自分の事業を言語化して相手に伝えることは、とても重要だったのではないかと思います。言語化のために特別にトレーニングしてきたことはありますか。
結果的にスナックでの異業種交流会が、自分の事業を言語化する機会になっていたと思います。
私が主催となりカウンターに立ってイベントをしているので、来店される方から「何をしたいの?」「どうなりたいの?」と、よく質問を受けていました。それを毎週繰り返すことで、結果的にピッチの練習をしている状態になったことが、事業を言語化するトレーニングになったのだと思います。
ー 人脈形成において、重要だと感じていることがあるそうですね。
一つはイベントを主催することです。人脈を作るなら、既存のイベントに参加するよりも主催することのほうが効果的でした。この活動によって、地域の方々が自分の意思で関わってくれる場を開いていけば、必ず誰かが見てくれているということを強く感じました。
もう一つは法人化することです。NPOとして活動していた当初は、異業種交流会などで名刺交換をしても、なかなか話を聞いてもらえないことがありました。そこで、私たちが何をしているかを明確に伝える「社名」や「代表取締役」という肩書を持ち、法人化して対外的な信頼を得るための責任を示すことで、活動内容への関心を持ってもらえる機会が増えました。法人という形をとることは、対外的な信頼を得るためのひとつの責任の表現であり、大切な選択肢だと感じています。

ー その他に、起業するうえで困ったことなどはありましたか。
最初は、見積書の作り方などの事務処理や金額設定など、何もかもがわからないことだらけでした。まちづくりに関する知識もなかったので、自分で調べながら、周りの経験豊富な方たちにも素直に相談して乗り越えました。このとき親身に対応してくれた方々が、今の会社の主要メンバーになってくれています。
独自の立ち位置を築き自らの価値を最大限発揮できる場所で輝く。
まちづくりの事業は男性が多いと聞きました。
こうした中で福岡さんはどのような戦略をとっておられるのですか。
人がいるところ、いわゆる「レッドオーシャン」では戦わないようにしています。その一つが寿通り商店街のまちづくりプロジェクトです。
商店街の組合は、これまで男性の商店主が中心となって運営されてきた経緯があり、大型イベントなどの集客型の施策が主流でした。
そうした中、まちづくりという分野に関わる中で、自分がすべきことは何だろうと逆算した時に、商店街という分野であれば、女性である私が、これまでとは異なるアプローチができると感じたことが大きな理由です。
私たちの成果をより多くの人たちに見てもらいやすい商店街での活動は、会社にとっても、地域にとっても効果が高いと感じています。

あとは、浮いた存在でいることも意識していることの一つです。「あの人おもしろいことをしているよね」と話題にのぼり、認知してもらえるように気を配っています。
自分が関心を持っていることや、暮らしの中で培った感覚、小さなコミュニティへのまなざしなど、私たちの視点を大切にすることが、結果的に活動の特徴につながっていきました。フィールドの性質にかかわらず、自分のやりたいことがどこにあるか、その中でどんな得意が生かせるかを考えると、自ずと自分らしい動き方が見えてきたように思います。
つまりは人と比べたり、流行を追いかけたりせず、自分が心からおもしろいと感じられることを大切にしています。
人と同じようなことをするのではなく、自分が楽しめて、さらに最大限に自分を生かすことで、人の役に立てるように意識しています。
ー その他に、事業を行う上で大切にしていることはありますか。
2つあります。一つは「自分が楽しいか、事業を進めやすいか」という点、もう一つは「自分の価値を最大化したものが、ちゃんと社会に還元できるか」という点です。
前者については、どんな人とパートナーシップを作ってチームを作るかを重要視しています。例えば、依頼を受けたときや挑戦したいことがあったときに、この人とだったらできると思える仲間とチームを組めるかどうかで、進めるかどうかを判断しています。
後者について、私が社会に還元できる一番の価値は人とのつながりを組み直すところだと思っています。商店街の活性化も、商品開発も、突き詰めれば、今いる人や新たな人との組み直しだと思っています。
個人の悩みから生まれた起業でも自信を持って。
ありがとうございます。
最後に、これから起業・創業を考えている”女性”へ伝えたいことはございますか。
これまで北九州市の女性の起業支援を10年ほど続けています。そこで感じるのは、女性の起業の多くが、自身の困り事に端を発していることが多いということです。
こうした事業はきっと社会を良くしていくだろうなと感じるので、小さなことでも思いついたらぜひ実現化してほしいです。
女性特有の強さやしなやかさは、起業の武器になると思います。たとえネガティブな経験や気づきから生まれたアイデアであっても、ぜひ自信を持って起業してもらいたいですね。
Bloom福岡では、福岡氏をはじめとした女性の先輩起業家との交流も図ることができるなど、本気で起業したい皆さんをサポートする仕組みを整えております。気になる方はぜひLINE公式アカウントを友だち登録し、参加してみてください。

■会社概要
会社名:株式会社三角形
https://sankakukei.co.jp/company
設立:2015年
代表:福岡 佐知子
■事業内容
・PR・プランニング
・プロジェクトマネジメント
・まちづくりブランディング
■問い合わせ
以下から問い合わせをお願いします。
https://sankakukei.co.jp/contact