多くの挫折を乗り越え、自分を信じ続けて築いたもの 株式会社YOUI 代表取締役 原口唯氏の起業ストーリー

2017年の起業後、SDGsなど社会価値創出のためのコンサルティング業を営む株式会社YOUI 代表取締役 原口唯氏。一見華やかに見える姿の裏には、実はさまざまな挫折を乗り越えてきた過去があるそうです。今回は、性別を理由に突然の挫折を味わった就職活動時代から、事業を行う上で大切にしていること、これから起業を目指す方へのメッセージなどについてお話を伺いました。

〜プロフィール〜
糸島市で育ち、2011年に九州大学芸術工学府修了後、都市開発コンサルティング会社、自治体シンクタンクを経て、2017年に社会価値提案のためのコンサルティング会社株式会社YOUIを設立。その他、長崎大学FFGアントレプレナーシップセンター准教授、一般社団法人全国リビングラボネットワーク理事、一般社団法人エッセンシャルワーカー協会理事なども務める。


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原口さんが、大学の就職活動時にぶつかった大きな壁は何ですか

大学3年生のとき、不動産ベンチャー企業に内定が決まっていたんですが、リーマンショックの影響で内定が取り消されてしまったんです。そのときに採用担当者の方から「こんなご時世でうちも採用を考えないといけない中で、さすがに地方の女の子は責任が取れない」と電話で言われて。

それまで、女性であることが理由で道が閉ざされるという経験がなかったので本当にショックでした。無気力状態になってしまい、どうすればいいのか分からないまま大学院に進学しました。

ー つらい経験でしたね。
ただ、そうして出会った人との縁が起業につながっているそうですね。

そうなんです。自暴自棄のまま、とにかく勉強を頑張ったら1年目で必要な単位が全て取れてしまって。
一方で社会に対する恐れもあり、就職活動を全くしていなかったので、私だけ就職先が見つかっていない状態でした。
自分でもどう生きていきたいのかわからず泣きながら恩師に相談したところ、東京のとあるインキュベーション施設でコミュニティマネージャーのアシスタントをしないかと言われて。そこで出会った方々からのご縁で、福岡の都市開発コンサルティング会社に就職することができました。

その後、担当していたプロジェクトに専念するため、福岡市の外郭団体に転職しました。
そこでの仕事には面白みを感じていましたが、年々仕事が増えていくのに給料は平行線のまま。
上司に愚痴を言ったところ「それはあなたの責任でしょう。不満があるなら個人事業主になるか自分で会社を作って、契約交渉しなさいよ」と言われて、あ、そうかと。それなら独立しちゃおうと、半ば勢いで法人を立ち上げました。

当時は、起業しようという思いはあまりなかったのですか?

起業を目的としていたというより、自分がしたい仕事を、自分が納得できる金額で契約したいというのが、当時の思いでしたね。あと法人であれ個人事業主であれ、業務委託契約ならひとつの仕事に100%従事する必要はありません。いろんな形で、やりたいと思う仕事を選択できる柔軟な働き方ができるのも、独立を決めた要因の一つになったと思います。

実際に起業し7年が経ちました(取材時点)。
事業を行う上で大切にしていることはありますか?

他人の評価を気にしないことでしょうか。

現在、私はSDGsなど、社会価値を提案するというお仕事をしています。
起業した頃は、ちょうどSDGsが叫ばれ始めたタイミングでしたが、その少し前までは「そんなこと大事にしたって意味ないよ」という人のほうが多かった時代でした。

それが、SDGsが叫ばれるようになった途端、「あなたの活動は、以前から重要な取り組みだと思っていたんだ」と声をかけられることが増えたんです。これって、裏を返せば新たなトレンドが生まれれば、皆さんのSDGsに対する認識や私への評価が再び180度変わることもあるということですよね。

ですから私は常に、人の評価にかかわらず、褒められてもけなされても、周りに惑わされずに自分を信じて活動しようと心に決めています。もちろん現状に対する正しい認識は持っておくべきですが、それが不変ではないことを常に心に留めておくことは大事かなと思います。

一方で、成果がわかりにくいもの・出にくいものは評価されにくいことは事実なので、すぐにお金や評価に変わる取り組みと時間がかかる取り組みを見極めて、事業を続けることも大事なことだと感じています。

原口さんの課題の見つけ方について教えてください。

うーん、「女性ならでは」って難しいですね。SDGsの観点から言えば、年齢や性別など属性を問わず、包括的かつ統合的に社会問題にアプローチしていける社会を作ることが大事だと考えられています。これは、課題解決だけでなくこれからのビジネスにも通じる心構えなのかなと思います。

例えば私は今後、結婚せずに子どもも産まない予定なんですが、そんな私が直面する課題って独身男性と変わらない側面もあると思うんです。ということは、今後私が直面する問題を考えることは、独身男性の社会課題解決につながる可能性も秘めていますよね。

同様に、子育て中のお母さんが自分の課題を考えることは、将来子どもが生きやすい社会をつくることにつながりますし、家事と育児に従事しなければならない状況を改善することは、介護の社会的な問題解決とも通じるところがあります。

そうやって物事を捉えていくと、どんな課題も自分事になりますし、課題解決が自分の未来を作ることにもつながります。何かを課題に感じる感性があるということは、社会に接点を持てているということですから、ビジネスチャンスを捉えているとも言えると思います。多くの女性にとって壁や課題はあると思いますが、それを可能性と捉えると起業のヒントを得たり仲間を増やすことにつながります。それって、面白いことだし、実は生きやすいということでもあるんじゃないかと思っています。

最後に、これから起業・創業を考えている方へ伝えたいことはありますか?

起業をしているからといって、優れているわけではないということを伝えたいですね。ポンコツでも大丈夫だよって。

女性の社会進出という話になると、決まって「能力のある女性は社長に、管理職に!」という言葉が出てくると思います。でも、それって女性に対してだけ能力主義のフィルターを掛けていることと同じではないでしょうか。私は、自分をダメ人間だと思っているので、男女の差だけでなく能力主義のフィルターまでかけられるのは辛いです。

ポンコツでも女性起業家になっていいんです。そうしたことも含めて、男女の違いにとらわれずに、よりよい社会を目指す時代をともに生きていけたらうれしいなと思います。


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■会社概要
会社名:株式会社YOUI
URL:https://youi.works/
所在地:福岡県福岡市博多区上川端町9-35 A101
設立:2017年5月
代表:原口唯

■事業内容
デザインプロジェクトにおけるコンサルティング事業

■問い合わせ先
Mail:info@youi.works

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